−チキン?
チキンちゃん。そんな感じよ、わかる?
−はははははっは。(笑)
みんなそれで、ドブロブニックっていう昔をそのまま残した町でねえ、そこに着いてねえ、5時間ここでフリータイムっていうわけよ。5時間、後車に集合。来ないと出るからねって。そのチキンちゃんだけひとりで。で、私の後ついてくるわけよ。最初手をつなごうとするけどねえ、私恥ずかしいわけ、日本人やから。そしたら、今度は腕組んでくる。やめろって。
−ははは。(笑)
そしたら、誰が恥ずかしいのって。誰も恥ずかしがってないって。結局恥ずかしがってるのは自分よねえ。最後は肩組んできたよねえ。うれしいやら、恥ずかしいやら。
−はは。(ちょっと笑)
で、別れ際にねえ、僕はここからブルガリアに行くわけ。彼らはギリシャに行くわけ。別れるときにねえ、真昼間よ、チキンちゃんがねえ、僕にキスしてきたよ。みんながおるのによ。たまらんよ、うれしいけど。
−はははは。(笑)
民族の違いだねえ。この子とも一時、日本に帰ってからも文通してたけど、どうしてんのかなあ。この頃は10ヶ国くらいの人と文通しとってねえ、疲れたよ。
−あはっははは。(笑)
別れにキスするってことは普通のことよ。でも、日本人じゃから。とくに我々の世代では大変なこと、昼間から。日本人を感じるよねえ。文化っていうか。色んな旅で教えられるよねえ。文化を背負ってるんだねえ。と思いますねえ。
−もうそろそろ時間なんで。長くなってすみません。
いえいえ、こちらこそ勝手にしゃべってねえ。
−では、和尚さんにとって旅とは?
「日本を知るということ。自分を知るということ。」
−「あちこち旅をしてまわっても、自分からは逃げることはできない」というヘミングウェーの言葉がありますが、自分から逃げようとする気持ちが旅をしようと思わせるのでしょうか。
そうでしょうね。逃避的なところはあるでしょうねえ、とくに今は。そしてやっぱり、旅をするっていうのは、帰る所があるっていうことでしょうねえ。
−だからこそ、旅ができるんでしょうね。あと、旅行は若い時と年とってからと、どちらがいいのでしょう。
いつでもいいでしょうねえ。若いほど良い面はたくさんあるでしょうし、いろんな事を経験してからの旅はまた違ったいい旅ができるでしょうしねえ。ただ、私に言わせれば、より若い時に行った方が感動の数が多いというか、その国で染まりやすい。
−こんな面もあったんだって発見するから、自分の枠が広がるような気もしますね。
そうそう。
−結構大胆だなとか。
それから、旅っていうのは形のあるものから、形のないものへの旅かもしれんねえ。実際形のあるものを求めていくんでしょうけど、食べ物とか。結局、心に出会うというか、形のないだね。
−最後に、和尚さんが仏門に入ったきっかけは?
物心ついたらお経を覚えててね。
−何の抵抗もなく?
つづく