−何の抵抗もなく?

坊さんになりたくないっていう気持ちはあったけどねえ。私は兄がいましてねえ、兄はどうしても坊さんになりたくないって。

−はあ。

で、大学入試の時にねえ、僕に、「お前頼むから寺継いでくれ。俺は違う道で生きたい。早稲田の東洋哲学受ける。」って。親父も「それは仕方ないから、ただ、早稲田落ちたら京都の龍大(龍谷大学)行けよ」って。落ちたわけよ。そして龍大行ったわけよ。でも、1年も経たないうちに、「仏教はすばらしい。一緒にお寺をやろう」って。親父が20年近くかかってよう変えなかった兄貴を、仏さんの教えが1年もかからずに変えたからねえ。これは本物だって思った。

−ほお。

それが僕の出会いでもあったかな。兄ほどの抵抗はなかったしね。ていうのは、親父が仏様に感謝して生きてたからね。

−押しつけられると嫌ですけどね

「やれ、やれ」っていうのはね。

−さっきの話じゃないですが、米屋の息子がパン屋になってるかもしれませんからね。(笑)

はっはは(笑)

−今は、ここ(我孫子)ですが、どうしてここを選んだのですか。

寺がなかったから。

−浄土真宗の?

そう。ところで、君たち今3年?

−就職活動です。こんなことやってますけど。(笑)

僕も色々やったけど、いろいろ可能性はあるからねえ。今は僧侶だけど、それまでがあったからだしね。

−欲張りになっちゃっていいのかなあ。

そう。やったことがマイナスになっても、それをプラスに変えようとする生き方だね。

−子供ってうらやましいですね。塾講でバイトしているんですが、担当が高3や浪人なので、現実的になって、将来の夢の欄が「公務員」、「サラリーマン」または書かない、そういうのばっかりなんです。

夢を失わない生き方っていうのは難しいけどねえ、大切だよ。

−でもまあ、「サラリーマン」とか書いても、実は自分ではとんでもないこと考えてたりするかもしれませんしね。あっ、6時ですが、鐘はいいんですか?

おお。

そのとき、「ゴーン!」と。近所の子供が鐘をついているようだった。

「ゴーン!」
僕たちも鐘をつかせてもらった。
「大晦日にはつきにおいで。300人くらい来るからいつもそれくらいついてるよ。」

煩悩108を超えてると思ったが、108という数より、ひとり一回ということが大切なんだとも思った。
この寺にはいつも人が集まってくる。「誰もがやすらぐ時」がここにはあるからだろう。