WAB監視

 先日「nimda」というウィルスが世界で猛威を振るいましたが、これによる数々の影響の一つにホームページへの感染という症状がありました。インターネットを通じて感染したnimdaはそのPCの全ドライブを走り回り、潜伏。このときHTML(ホームページのファイル)が感染した場合、そのホームページを更新しようものならウィルスも一緒にWEB上に連れていってしまいます。そしてこのホームページを見た人は・・・。MSNのホームページもこの罠にはまってしまい、ウィルス駆除をしたうえで、ページ上で注意喚起をしていました。
 外からの攻撃という意味では、HPの改竄(特に国家などの権威は狙われやすい)も一時話題になりましたが、ホームページの開設者は自分のHPを外敵から守るべくセキュリティーを強化する必要があります。

 しかし、どんなに城壁を堅固にしても、自分のあずかり知らないところで誹謗中傷されているというリスクを払拭することはできず、これにも対処しなければなりません。有名な事件があります。「東芝ビデオ事件(東芝クレーマー事件)」は記憶に新しいと思いますが、1999年、新聞、雑誌、ニュースなどあらゆるメディアに取り上げられました。ある会社員(当時38歳)が東芝のビデオを購入し、その初期不良修理に関する東芝側の対応の不満を自分のホームページで訴えたのが始まりです。ホームページでは、録音した東芝の担当者との電話のやり取りが公開され、マスメディアの影響もありますが、延べ660万人のアクセスがあったと言われています。最終的には、東芝が謝罪し、その会社員もホームページの大半を削除して事態は収拾しました。この事件以降、告発メディアとしてのインターネットの力が注目されるようになり、企業がWEB上の自社に関する書き込みを熱心に監視するようになりました。具体的な例としては、日本生命が今年3月、職員の実名を挙げて批判する書き込みのあった掲示板運営者に対し削除を求める仮処分を申請をするなど、各社それぞれの対応をしています。

 こうしたネット上の書き込みを検索してレポートするサービス「WEB監視サービス」を提供している会社があります。「デジタルアーツ」「ガーラ」などです。 特定のキーワードについて、ヤフー、グーグルなどのインターネット上の検索サイトや、問題掲示板などを自動的に検索し、毎日レポートするのが、基本的なサービスです。このサービスは、データ鮮度が高いことや、前日書き込みがあったものだけレポートできることが、セールスポイントです。例えば、グーグルが全世界のサイトを一巡するには2〜3ヶ月かかると言われていますが、それに対して、WEB監視サービスは対象のサイトを絞り込んでいるため、迅速にレポートできます。また、グーグルで検索した場合は、以前確認したものも見なくてはいけないため非効率的ですが、WEB監視サービスでは、前日更新があったものだけを確認することができます。更に、抽出された情報が誹謗中傷に関するものかどうか、情報の価値を自動的に判別する機能を提供したり、リスクコンサルタントを紹介して、ネット告発への対応方法をアドバイスしたり、多様なサービスが付加されています。ただし、現在のWEB監視サービスは文字検索が基本なので、「黒海偽児童」(国会議事堂)や、「似叛背畏怖」(日本政府)などと書き込みがされている場合は見つけようがありません。これは、モラルを失った匿名ユーザーの自己防衛策です。
 WEB監視サービスは、キーワード3、4個で月10万円が相場です。利用者は、自社の社名や競合他社の社名をキーワードとするケースがほとんどのようです。インターネット普及率があがればあがるほど、企業のリスク管理の視点から、WEB監視サービスを利用する会社は今後ますます増大していくでしょう。

 こうしたWEB上の告発・誹謗中傷は大半が匿名です。「便所の落書き」と言われるような、低レベルな書き込みがあるのも、匿名であるからこそです。インターネットは、匿名ユーザーを前提にして技術インフラが設計されているため、書き込みデータを拾うことはできても、誰が書き込んだのか、を確実に特定するのは極めて困難です。企業の対抗策が、書き込んだ個人ではなく、掲示板などサイトの管理者へ向けられるのにはこうした事情もあります。
 告発・誹謗中傷掲示板として名高いのが「2ちゃんねる」でしょう。もともとはそういう趣旨ではなかったと思いますし、たとえばこれが権威のある企業、大学、国家機関などが管理・運営するものであれば、もう少しモラルは保たれたのかもしれません。人間は、「匿名」という理性を奪ってしまう無責任な魔物に憑かれたとたんに、低俗な考え方をしてしまう傾向にあります。これに集団の心理が加わるともう手が着けられません。そういうところに人間の弱さ、醜さを感じてしまうのはぼくだけでしょうか。匿名の批難は無視すればいい、と高校の頃部活の先生に伝えたことをふと思い出しましたが、インターネットの発展によって、昔のような考えを貫くことすら難しくなってきていることを感じずにはいられません。
 一方、匿名ユーザーからのアクセスを許容し、不特定多数の人が情報を無料で入手できること、それによって情報の流通速度・範囲が飛躍的に拡大したことが、インターネットの本質、インターネット革命と言われる社会変革を引き起こした原動力のひとつであることも揺るがしようのない事実なのです。

 最後になりますが、 8月31日巨大掲示板サイト「2ちゃんねる」がネットオークションで売りにだされました。利用者が増大→運営費用肥大が背景と言われています。1000万円で入札開始、最終入札価格は・・・!?結局、オークションは中止となりました。