ネットベンチャーの動向

 ネットベンチャーとは、日本では1990年代後半に出現した「インターネット関連ビジネスを本業とするベンチャー企業」のことです。ネットベンチャーの特徴は、社員数50名以下、平均年齢も20代という、小さいが若い優秀な人材が集まっていることでしょう。

 90年代の低金利時代、投資家が金の行き場を探している頃、アメリカでのネットベンチャーの成功が日本にも伝えられました。これを機に、日本で細々とインターネット業を立ち上げていた20歳そこそこの若い起業家達に、大量の資金が集まるようにりました。ネットバブルの始まりでした。アメリカでは、6人のジャーナリストが酒場で思いつき、レシートの裏に書いたビジネスプランに対して、たまたま隣に座って話を聞いていた投資家が、その場で2,500万ドルの出資を申し出たという話があります。紙切れ一枚に25億円以上の値段がついたこの話は、ネットバブルを象徴したものと言えるかもしれません。日本でも当時は、数ページのビジネスプランがあれば億単位の資金が簡単に調達できる、と言われていました。

 しかし、昨年来アメリカのネット関連企業の株価が急落、ITバブルが崩壊し、日本でもネットベンチャーの生存競争が厳しさを増しています。ネットバブルが華々しかった分、崩壊後のネットベンチャーに対する目は厳しくなってきています。しかし、ネットベンチャーは、若く優秀な人材とユニークなビジネスアイデアを持つ会社が多く、高い潜在能力と将来性は輝きを失いません。この可能性に魅力を感じて、ネットベンチャーの動向をリサーチ、自社のビジネスへの利用可能性を探るため、渋谷にこっそりオフィスを構える大企業もあるようです。これは、ITの急進により、ビジネス・アイデアに企業の大小は関係なくなったことが背景にあることは言うまでもありません。ここからもわかるように、ITが産業構造に改革をもたらすことは確かです。また、ネットバブルの崩壊により「ITのユーザーであること」だけでは表面的なIT化にとどまってしまい、「ITで企業の収益構造を変えること」が真の構造改革であり、特に日本企業が世界的に遅れを取っている部分かもしれません。

【2つのベンチャー企業】

<インターネットナンバー>
 URL(ホームページの住所)を数字に置き換え、その数字を利用する権利を売って商売している会社があります。このベンチャー企業、社員26名、社長は50代。ユニークなアイデアと特許を武器に、徐々に事業を拡大しています。(ちなみにアイデアの出所は社長でなく若手社員)
 インターネットを利用する際、URLを入力する時、私たちは慎重になります。http://www.----.co.jp/というおまじないのような記号の羅列を一文字でも間違えたら希望のサイトに行き着くことができません。「dokomo」と入力送信して、Not Foundとなった経験を持つ人もいるのではないでしょうか?
 この会社は、「アドレD:\Homepage\itnews\itnews3.htmスを数字に置き換える」ことそのものの特許を米国で取得、日本でも特許出願中です。インターネットナンバーのサイト(http://www.888.ne.jp)で見たいサイトの数字を入力するだけで、簡単にアクセスすることができます。このインターネットナンバーは、数字キーしかない携帯電話からサイトへアクセスする場合にその威力を発揮します。携帯電話向けサイトの多くは、インターネットナンバーを取得していて、最近では雑誌などでもよく目にするようになりました。

 SONYは7669(携帯電話でSONYという文字を探せばわかります)。ソニー損保は919919(クイッククイック)で宣伝しているのでご存じの方もいるのではないでしょうか。安田火災もインターネットナンバーを取得していて、1001です。また、7桁は郵便番号、8桁は生年月日で占いを提供しています。

<オン・ザ・エッヂ>(http://www.edge.co.jp/)

 コンサルティングから開発、運用まで、サイトを構築するための全てを自社でやっているWEB製作会社です。社員148名、平均年齢28才。社長も29才。ビットバレーを呼ばれる渋谷において、ネットベンチャーの典型的な会社です。下請けに出さず全て自社の経営資源で賄い、無料のソフトウェアを駆使して製作コストも低く抑えているのが特徴です。ベンチャーとしては比較的手堅いビジネスを続けています。

 昨年4月にマザーズに上場、数十億の資金を集め、ベンチャーキャピタルを設立し、周辺事業へも意欲を見せています。大口顧客としては、朝日生命のネット販売専門会社「朝日ライフネット」でしょうか。大手IT企業と比較しても引けを取らない、高いWEB製作能力は評価できます。しかし、社員数がこの1年間で倍近くまで膨れ上がり、社員教育、マネジメントなど組織としてはまだまだ多くの課題を抱えています。ベンチャー企業には、「企業」として存在するために、ひとつひとつ課題をクリアしていくことも大切な視点です。逆に、大手企業は、こうしたネットベンチャーのリスクを冷静に評価しながらも、大手IT企業にないユニークな技術や潜在能力をウオッチして、先鞭を付けていくことが重要です。