ソニーという会社
「太古の時代に恐竜が滅んだのは、地球に隕石が落ちて環境が激変したからだと言われているが、もうすぐ2度目の隕石が落ちることになるだろう。」2000年7月ソニー出井会長のプレスインタビューでの発言です。ここで、言われている2度目の隕石とは「ブロードバンド」のことを指します。ブロードバンドとは、高速にインターネット接続できる通信回線の意味です。例えば、CATV(ケーブルテレビ)、ADSL、光ファイバー、FOMAなどの次世代携帯電話のことを指します。(「ADSL」参照)
出井会長の発言が示唆しているのは、 「ブロードバンドの普及により、既存のIT企業・ハイテク産業の事業環境は激変し、厳しい生存競争にさらされ、事業の再編を迫られることになるだろう」ということです。一年前の出井会長の予言どおり、日本のブロードバンド元年となった今年、国内大手IT企業・ハイテク産業は、生き残りをかけた事業再編を始めています。事実、5月松下と日立は情報サービス分野で提携を発表。日立の庄山悦彦社長は、提携について「両社の強みを合わせることで、ブロードバンド時代の最強タッグになる」と発言しています。また、8月末、富士通・日立が続いて、大規模な事業再編を発表しました。
さらに出井会長は、今年9月6日の世界経営者会議で、生き残る方向として次のように発言しています。「日本の大企業は生産から販売まで全て自前でやろうとする、バーチカル(垂直的)な事業構造をやめて、事業分野を集中させるホリゾンタル(水平的)な構造に変えるべきだ。」実際、ソニーは既に昨年年初から、ブロードバンド時代をにらんだ経営戦略を立案し、ブロードバンドエンターテイメント市場に特化した事業構造へ向けた改革を着々と実行してきています。そして、「ソニー・ドリームワールドの実現に向けて」と題された経営方針には、3つの改革を推進していくことが謳われています。
・eSONY推進本部の設置など本社機能の改革
・ゲーム機プレイステーションなどネット事業の強化
・パソコンVAIO、PS2などエレクトロニクス分野の強化
そして、ソニーのそうした改革を実現するための重要な要素ひとつが、PS2(プレイステーション2)なのです。
ソニーは1993年SCE(ソニー・コンピュータエンタテイメント)を設立。それまで任天堂が制圧していた家庭向けゲーム機市場に参入しました。ソニーのゲーム機プレイステーション(PS)は、ゲームソフト会社を瞬く間に取り込み、わずか数年でゲーム機市場の60%以上のマーケットシェアを奪い、新規事業を成功させました。PS2はプレイステーションの次世代機として、2000年3月から発売開始されましたが、CPUは大型コンピュータ並みの高性能、かつ、DVD対応でありながら、3万5千円という低価格で販売されています。安いDVDプレーヤーとして購入する人もいます。発売当初まだ十分でなかったPS2対応ゲームソフトも、徐々に揃ってきており、全世界に5年で1億台出荷するという当初の目標も現実味を帯びてきました。「一家に一台」となれば、PS2という高性能の端末に、
・ソニー製のエンターテイメントコンテンツ群
・SME(ソニーミュージックエンターテイメント)の音楽
・SPE(ソニーピクチャーエンターテイメント)の映画
・SCE(ソニーコンピュータエンターテイメント)のゲーム
など、 ブロードバンド時代にふさわしいコンテンツが流し込まれ、消費者の生活がソニー一色になっていきます。これが「ソニードリームワールド」です。(ソニーのパソコン「VAIO」がも同じ役割を担っていることは言うまでもないでしょう)ソニーのすごさは、徹底したその互換性にあるとも言えます。そして、「メモリースティック」がその接着剤でもあります。ひとつソニー製を買えば、次に買う物がどんどんソニー製になっていく。パソコンが、MD、テレビ、ビデオ、デジカメ、palm(電子手帳、ウォークマンにもなる)と結びつけられれば、実際、効率的・快適な余暇を過ごすことができます。ぼくもお金があれば・・・と思ってしまう。これがソニーの戦略なんだと思います。
IT戦略会議議長への出井会長就任、CATV事業への参入など、まさにブロードバンド時代の主役として、ソニーは着々とその歩を進めています。
「ソニーは超有名企業だけど、優良企業ではない。」
「ソニーは役に立つものは作らない。」
ソニーのある技術者の話です。松下・日立などは、冷蔵庫・洗濯機といったいわゆる「しろもの家電」(生活必需品)が、長い間安定した収益源でした。一方、ソニーは、冷蔵庫・洗濯機には目もくれず、ラジオ・ウオークマン・CD・ビデオ・テレビゲームといった、「なくても死にはしない」ものばかり作ってきました。そうした商品は、消費者の感性に響き続けなければなりません。ソニーは、こうした「消費者の感性に訴える商品」を一貫して製造販売し続けてきたわけです。常に時代感覚、時代の変化を意識せざるをえない。こうして、時代と共にみずからも変化しつづけ、感性鋭敏な若い社風が維持されていているとも言われています。また、『ソニーという運動』を皆で推し進めていると評されるように、参加意識の高い社員が集まり育つのにも、こうした背景があるのでしょう。大企業でありながらベンチャー精神を失わないこと。「ソニー銀行」のような会社を作れるわけです。ちなみに、ぼくはすでにソニー銀行の預金者です。三井住友銀行、つまりAMPMのATMを使用でき、24時間365日手数料0(今年度限り。来年度以降は未定。ただし、来年以降の郵便局との提携でサービスが拡大するかも?)はかなり魅力的です。